このサイト「航空機がある風景」は、全国の空港で撮影した航空機写真をもとに、撮影場所の選び方、構図の考え方、使用機材や撮影設定などを写真付きで解説する航空写真専門サイトです。
実際の撮影体験をもとに、天候や光の条件、撮影時の工夫や失敗例も交えながら、これから航空機撮影を始めたい方や、表現の幅を広げたい方に向けて実践的な情報を発信しています。
- サンセットりんくう

サンセットを望むにはあまりに雲が多かった
キャセイが出発するとので りんくうビーチへ
超望遠一本勝負で離陸シーンは撃沈
進路を西に向けてからが本番だった
Nikon Z6Ⅲ AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
当初思い描いていた“理想のサンセット”とは少し違う形で辿り着いた一枚。空を見上げた時点で、雲の量は明らかに多く、素直な夕陽を期待できる状況ではなかった。沈みゆく太陽が雲に飲み込まれて終わる可能性も高く、撮影としては判断の難しいコンディションだった。
この日の狙いは明確、超望遠一本勝負。離陸機をシルエットで切り取る、その一瞬にすべてを賭ける構えだ。500mmという画角は、自由度が極端に低い。立ち位置、進路、タイミング、そのどれか一つが狂えば画は成立しない。離陸シーン自体は確かに迫力があるが、真横からの上昇シーンでは空の表情が単調だった。
結果として、雲はむしろ主役になった。分厚い雲の隙間から現れた太陽は、輪郭を失いながらも強烈な存在感を放ち、空全体を橙色に染め上げる。その上を横切るように浮かび上がった機体のシルエットは、意図せず強い対比を生んだ。ここでは、機体のディテールは一切不要で、形が分かれば十分。むしろ黒く沈んでくれたことで、空の劇的な表情が際立った。
振り返れば、これは計算通りに撮れた一枚ではない。むしろ、条件に翻弄されながらも、最後に空が用意してくれた答えを、そのまま受け取った写真だ。
- 悶絶のファイナルアプローチ

久しぶりに山を下りて丘をロケハン
冬といえども揺らいでいる空気の影響を回避するためだ
「おっ」と思った場所も過去にしくじった場所
まだ見ぬ場所を探し当てたい
Nikon Z8 NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S 親子の木から
超望遠で遠景を撮るとわずかな揺らぎが像を甘くする。その影響を少しでも避けるため、今回はいつもの山を下り、空気層を短く切る位置を選んだ。撮影地としてはロケハンを重ねてきた場所だが、「おっ」と感じるポイントほど、過去に痛い思いをしてきた場所でもある。
雲が割れたとき、まず目に飛び込んできたのは、雪に刻まれた深い谷のラインだった。風が作り出した雪面の起伏は、人工物では決して再現できない複雑な造形を見せる。
ファイナルアプローチという時間帯は、撮影者にとっても精神的に追い込まれる瞬間だ。高度、バンク、速度、すべてが刻一刻と変化し、迷いはそのまま失敗につながる。構図を詰めすぎれば機体を逃し、引きすぎれば山の迫力が薄れる。結果として派手さはないが、息を止めて見てしまうような緊張感が残った一枚になったと思う。
- 目覚めるHND

漆黒の空の夜明け前、国際線が次々と降りてきていた
京浜島の前からはトーイングされた機が次々とターミナルへ
空はあっという間に蒼から赤へ
日の出と共に北へ南へと出発機が続いた
Nikon Z6Ⅲ NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S
夜と朝がせめぎ合うわずかな時間帯に、羽田空港が持つリズムそのものを写した一枚だ。漆黒だった空は、夜明け前になると一気に表情を変え、濃い藍から深い橙へと移ろっていく。その短い時間に、国際線は次々と到着し、空港は眠りから覚める準備を始めていた。
京浜島の前に立つと、その変化はより立体的に感じられる。トーイングされた機体が静かにターミナルへと引き込まれ、滑走路の向こうでは次の出発を待つ機体が息を潜めている。動きは多いが、どこか抑制され、夜明け前特有の緊張感が漂っていた。
構図の中で意識したのは、「時間の流れ」を一枚の中に同居させることだ。手前には駐機中の機体と顔を出した太陽、上空には上昇を始めた出発機。それらを同時に収めることで羽田の朝を象徴的に表現した。空の色が急速に赤へと傾いていく中で、シルエットとして浮かび上がる機体は、細部を語らない代わりに、目覚め前を雄弁に物語っている。
70–200mmという中望遠域は、この距離感にちょうど良かった。空を大きく取りつつ、地上の機体をしっかりとフレームに残せる。広角では散漫になり、望遠では時間の広がりが削がれてしまう。その中間の選択が、この写真の静けさと密度を支えている。
夜明けとともに、北へ、南へと出発機が続き、空港は完全に目を覚まし、昼の顔へと切り替わっていくが、この色、この空気はほんの一瞬で消えてしまう。「目覚めるHND」と名付けたのは、羽田が動き出す前の、このわずかな隙間の時間を表現できたからだ。この一枚は、派手な瞬間ではない。しかし、空港という場所が持つ鼓動を、最も素直に感じられた時間を写せたと思っている。夜明け前、羽田の鼓動が徐々に大きくなっていた。 - 結晶の輝き

画面左下にキラリと光る結晶がある
構想段階では真っ白な雪原にその輝きを見ていた
撮影の一瞬は影を追うのでパンパン
帰ってきてから想像の結末を確認するのが楽しい
Nikon Z8 NIKKOR Z 20mm f/1.8 S
主役を飛行機だけに置かず、足元の雪にまで視線を広げたことで生まれた一枚。画面左下に、太陽光を受けてキラリと光る雪の結晶がある。構想段階では、真っ白な雪原の中にその小さな輝きを見つけ、「これを画面に残したい」という思いが強くあった。冬の雪景色は一様になりがちだが、よく見れば光を反射する粒子が無数に存在している。その存在感を、飛行機と同じフレームに収めることが、この作品の出発点だった。
しかし撮影の瞬間は想像していたほど静的ではない。機体は頭上を通過し、その影も同じ速度で一瞬で通り過ぎてしまう。構図を整え、雪原の輝きを意識していても、シャッターを切る瞬間はどうしても影と機体の動きに引っ張られ、結果として細部まで完璧にコントロールできたわけではないが、その不確かさこそが、この一枚にリアリティを与えている。
画面全体は寒色に支配され、空と雪原が静かに広がる。その中で、機体の背後から差し込む太陽の光が漏れていることがこの影の形を物語っているはずだ。
20mmという広角レンズは、空間を大きく捉える一方で、足元の情報も捨てない。雪面の質感、微細な凹凸、そして結晶の反射。それらが画面に残ることで、極寒の朝の空気がより具体的に伝わる。
撮影後、帰宅してから画像を確認すると、現場では気づききれなかった雪の輝きや、影の流れが、画面の中で改めて立ち上がってくる。想像していた結果と、実際に写っていたものが微妙に違う。その差を楽しめることも写真の楽しみだ。
「結晶の輝き」は、計画と偶然の間に生まれた一瞬。狙い通りでなくても、足元にあった小さな光が、確かにこの写真を支えている。その構想を持ち帰れたことが、この一枚の何よりの収穫だと思っている。 - しゃがんで構成

撮りたい方角に点在する雑音
電柱や雑木 道路や車もそうだ
それを雪の前ボケで覆ってしまおうとする大雑把な処理
これでも背後の山選びの結果だ
Nikon Z8 NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
構図を整えるために“位置を変える”ことの大切さを、あらためて実感させられた一枚だ。狙いたい被写体は明確だったが、正面方向には電柱や雑木、道路や車両といった雑音が点在しており、立ったままの視線ではどうしても画面が落ち着かない。空と機体、そして背景の山だけで成立させたいという意図に対して、現実の風景はあまりに情報量が多かった。
そこで選んだのが、思い切ってしゃがむという選択だった。視点を一段下げるだけで、手前の雪が前ボケとなり、煩雑だった要素が一気に隠れる。いわば「雪の前ボケで覆ってしまう」という大雑把な処理だが、この環境ではそれが最も合理的だった。結果として、画面下部は白一色に整理され、主役である機体と、背後の山並みが素直に浮かび上がった。
この写真では、機体の大きさ以上に、背景との関係性を重視している。山の斜面に残る雪の表情は、細かい粒立ちを持ち、機体の白とは異なる質感を見せてくれる。その差異があるからこそ、白い機体が背景に埋もれず、輪郭を保ったまま存在できている。しゃがんだことで背景の山選びにも自由度が生まれ、この結果につながった。
600mmという超望遠は、構図を切り取る一方で、少しの立ち位置の違いが画面に大きく影響する。上下数十センチの変化が、背景の重なりや前景の処理を大きく左右するのだ。この一枚は、ファインダー越しに見える「うるささ」をどう消すか、その場で考え、身体を使って調整した結果でもある。
派手なテクニックではないが、しゃがむという行為は、風景を整理するための確かな手段だと感じている。雑音を消し、必要な要素だけを残す。その判断の積み重ねが、最終的な一枚を形作る。この写真は、その過程が素直に反映された結果だと思っている。


