雲の隙間

刻々と雲が広がってきた午後
エアドゥ83便が旋回していると山頂が見えた
600mmで撮影した絵には雲ばかり
猛烈なトリミングで記憶と重ねた
Nikon Z8 NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
狙って待ち続けたというよりも、状況を読み続けた結果、ふいに訪れた一瞬を掬い取った一枚である。午後に入ると刻々と雲が広がり、山はほぼ完全に隠れてしまった。正直なところ、この時点では「今日は山バックは厳しい」と感じていたが、それでも旋回する機体を追いながら、雲の動きだけは視界の端で追い続けていた。
エアドゥ83便が旋回に入った瞬間、雲の流れがわずかに変わり、山頂付近だけがふっと姿を現した。そのわずかな隙間を見た瞬間、迷いはなかった。機体の位置、姿勢、そして山頂との関係性を瞬時に判断し、フレームに収めることだけに集中した。完全な山容ではなく、あくまで「雲の中から覗く山頂」であることが、この写真の本質だと思っている。
600mmで撮影した元画像は、画面の大半を雲が占めていた。だが、その中に残った記憶の断片――雲の切れ目、山頂の質感、旋回中の機体の角度――それらを重ね合わせるように、思い切ったトリミングを施している。結果として、視覚的には非常にシンプルだが、現地で見た光景や緊張感は、むしろ凝縮された形で残せたと感じている。
構図は上下の余白を大胆に整理し、雲の層と機体、そして山頂の三要素だけで成立させた。機体は決して大きくはないが、雲の柔らかさの中で、その存在が確かに浮かび上がる。山頂もまた、全貌を見せないことで、かえって想像力を刺激する存在になった。
この一枚は、完璧な条件が揃った結果ではない。むしろ、条件が崩れていく中で、それでも目を離さずに待ち続けた先に、偶然と必然が重なって生まれた写真だ。雲に阻まれた午後だからこそ残せた、記憶に近い一瞬だと思っている。
