出発機の影

出発時刻の太陽方位が滑走路正面

これは影も撮りやすい

しかし遅れとともに想像以上に太陽が動いた

「そんなに離れることはない」とする理屈が勘を抑えて撃沈

Nikon Z8 NIKKOR Z 20mm f/1.8 S

飛行機そのものではなく、「影」を主役に据えた一枚である。撮影時、この場所に立った理由は明確だった。出発予定時刻の太陽位置が滑走路正面に近く、条件が合えば、雪原に長く伸びる機影を簡単に捉えられると読んでいたからだ。冬の低い太陽は、光だけでなく影そのものを被写体に変えてくれる。
 
雪原は風で均され余計な凹凸が少ないので、そこに落ちる機体の影は歪が少なく、飛行機の形状がそのまま現れる。しかし、出発時間が遅れ、その間に予想以上に太陽は動いた。冬とはいえ、低い高度で移動する光源の変化は速く、影の角度は刻々と変わっていく。
 
「そこまで大きくは離れないだろう」という理屈が判断を鈍らせ、現れた航空機は太陽の上を通過することに気が付いた。急いだものの立ち位置を変えられたのはほんの数歩分だけ。影は想像していた位置から外れ画面を斜めに横切っていた。
 
構図は、広大な雪原と空を大きく取り、機体自体は画面右上の小さな存在に留めている。主役はあくまで地上に落ちる影であり、空を飛ぶ機体は控えめに配置。20mmという広角レンズを選んだことで、影と機体を収容でき、冬の滑走路周辺の静けさが伝わる。
 
この一枚は、計算通りにはいかなかった写真。しかし、飛行機が飛び立つ一瞬と、太陽が刻む時間。その交差点を写し取ることに射幸心を煽られるのだ。

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