不遇なコンディション

山が全く見えなくなった夕刻
主役であるJL555をどう撮ろうかフル回転
冬にもたどり着けるシンボルツリーに向かう
太陽もいい位置にあるじゃないか
Nikon Z8 NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
当初思い描いていた撮影プランが崩れた末に辿り着いた一枚である。山は完全に雲に隠れ、背景として期待していた稜線は一切見えなくなった。正直なところ、この時点で条件は決して良いとは言えず、「今日は厳しい日になる」と感じていた。主役と考えていたJL555を、どのように画面に残すべきか、頭の中では何度も構図を組み替えていた。
そこで思い出したのが、雪原の中にぽつんと立つ一本の木だった。冬を象徴するようなその姿は、周囲に何もないからこそ強い存在感を放っていた。山が消えたことで思考は整理され、逆に「何を主役に据えるか」を冷静に考える余地が生まれたとも言える。この木を軸に構図を組めば、風景として成立する――そう判断した瞬間、迷いは消えた。
太陽の位置も、この選択を後押しした。やや高めの位置から差し込む光は、雪原に柔らかな陰影を与え、木のシルエットを際立たせていた。条件としては決して理想的ではないが、「悪くない場所に太陽がある」と感じられたことで、気持ちは前向きに切り替わった。機体は大きく写さず、風景の一部として配置し、冬の空を横切る存在として捉えることにした。
135mmという中望遠域のレンズは、広すぎず狭すぎない画角で、この判断にちょうど良く応えてくれた。雪原の緩やかな起伏と一本の木、そして遠くを飛ぶ機体。それぞれの距離感が自然に保たれ、静かな冬景色の中に確かな物語性が生まれている。
この写真は、好条件が揃った結果ではない。むしろ、不遇な状況に置かれたからこそ、視点を変え、被写体の意味を問い直した末に生まれた一枚だと思っている。山が見えなくても、飛行機が小さくても、そこには確かに「撮る理由」があった。その判断を信じてシャッターを切れたことがこの作品の収穫だ。
