期待の時間

エバレットからセントレアに向かっているLCF
到着予定時刻は日没の5分後
早着の期待、夕焼けの期待
いずれも叶わなかった
2026/1/31
Nikon Z6Ⅲ AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
結果よりも、その直前に流れていた時間そのものを写した一枚だ。被写体はエバレットを発ちセントレアへ向かうLCF。到着予定は日没のわずか5分後。上空での風、先行機がなければ早着の可能性もあった、――そんな期待を胸に、ただ空の色が変わっていくのを待っていた。
陽が落ちて雲は層を成して静かに重なっていく。山の稜線には風車が並び、すでに光を失いつつある地上は、輪郭だけを残して影に沈み始めていた。撮影者としては、まだ「間に合う」と思いたい時間帯だ。早着の可能性、わずかな遅れ、雲の切れ目。頭の中ではいくつもの仮定が巡り、シャッターを切る理由を探し続けていた。
しかし、結果として期待していた条件は訪れなかった。夕焼けは思ったほど濃くならず、光は退いてしまった。それでも、空が完全に暗くなる直前、機体は確かにこの色の中を通過している。黒く沈んだシルエットは機首の窓を強調し、その存在を強く主張していた。
構図は、空の占める割合を大きく取り、機体をあえて上方に配置している。主役はLCFでありながら、同時に「空の変化」そのものでもある。500mmという焦点距離で山と空を圧縮し、稜線と雲の層を重ねることで、時間がゆっくりと閉じていく感覚を画面に残した。
この写真は、狙い通りではない。だが、待ち続けた末に訪れた「叶わなかった瞬間」を、そのまま受け入れて切ったシャッターだ。期待が外れたからこそ、余計な情報が削ぎ落とされ、ただ機体と空だけが残った。撮影とは、常に結果を追い求める行為だと思われがちだが、時には、その過程や時間の質感が本質になる。
「期待の時間」と名付けたのは、その静かな手応えを忘れたくなかったから。結果が出る直前までの、最も濃密で、最も報われない時間。その空気を写せたこと自体が、この一枚の価値だと思っている。

