演出のフィルタ

現像ソフトにあるプリセットフィルタ
禁じ手のようであまり利用してこなかった
しかし、とんでもなく期待の色に近づけてくれたのだ
まあたまにはいいだろう
Nikon Z6Ⅲ NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
撮影後の現像工程において、これまで意識的に距離を置いてきた表現手法と向き合った結果生まれた一枚である。被写体や構図自体は、これまでと変わらない。雪に覆われた一本道と、その先に広がる冬の空、そして上空を通過する機体。現地では、あくまで静かで淡々とした光景として目に映っていた。
この写真の転機は、現像ソフトを開いたときに訪れた。プリセットとして用意されているフィルタは、どこか「安易な演出」のように感じられ、これまで積極的に使うことはなかった。色を作り過ぎてしまうのではないか、現場で見た印象から離れてしまうのではないか。そんな先入観があったのは正直なところだ。
しかし、このカットに限っては、試しに適用したフィルタが、驚くほど自分の記憶に近い色を引き出してきた。冬の空の澄んだ青、雪面の冷たさ、樹林の乾いた質感。それらが過剰にならず、むしろ整理された形で浮かび上がった。現場で感じた「冬の空気」を、言葉ではなく色で補足してくれたような感覚だった。
構図自体は、道路の直線を強く意識し、視線が奥へと自然に導かれるよう組み立てている。その延長線上に飛び立つ機体を配置することで、「地上から空へ」という物語を静かに成立させた。135mmという画角は、風景を切り取り過ぎず、かといって広がり過ぎることもなく、この距離感にちょうど良く収まっている。
現像は、撮影の延長線上にある作業だと改めて感じた一枚でもある。フィルタは魔法ではないが、使いどころを選べば、撮影者の記憶や意図に寄り添ってくれる道具にもなる。常用するつもりはないが、「たまにはこういう表現も悪くない」。そう素直に思えたこと自体がこの写真を残した理由だ。

