ザ・始発

一夜を明かして夜明け前から出発準備の始発便
これぞ始発という感じだ
夜明け前にクッキリと出ていた大山は刻々と霞に飲まれてゆく
ギリギリのタイミングでテイクオフ
Nikon Z8 NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
まだ街が目覚める前、夜明け前から準備を進めていた始発便が静かに動き出す。その瞬間こそ、この作品のテーマ「始発」だ。
空はすでに橙色へと染まり始めているが、光はまだ低く、世界は柔らかな逆光に包まれていた。背景に浮かぶ大山は、夜明け前にはくっきりと姿を見せていたものの、時間とともに薄い霞に飲み込まれていく。輪郭が消えていくその前に、機体がちょうどテイクオフした。まさにギリギリのタイミングだった。
600mmの超望遠で山と機体を圧縮し、距離感を詰める。意図したのはディテールではなくシルエットだ。逆光の中で機体は黒く締まり、山の稜線と溶け合うように浮かび上がる。オレンジ一色の画面の中で、わずかな濃淡だけが立体感を生む。余計な要素を排除し、色と形だけで語る構成にした。
露出は空の階調を優先し機体はあえて黒く落とす。ほんの数分で色は変わり、山はさらに霞み、始発の高揚感も薄れてしまう。
「これぞ始発」という感覚は、単に早い時間という意味ではない。静寂の中で動き出すエンジン音、まだ眠る街、そして日常の始まりを告げる一本目の離陸。その空気を、色とシルエットで封じ込めた一枚だ。
